選考委員でもなんでもない一般ピープル(ぼく)はどの作品を選ぶ?──第171回直木賞候補作品(2024年上半期)5作を読んでみた

直木賞2024上

 直木賞は読書界隈における夏のお祭りといっても過言ではないだろう。なぜならば純文学を対象としている芥川賞と比べると、ぼくのような一般ピープルでも読みやすい大衆小説が対象だからだ。これまでに読書を楽しんだことがなくても、同賞の受賞作なら──作風の好き嫌いはあれど──手にとったときに間違いは起こりにくい。

 受賞した作品はそもそも売れているだろうけれども、さらに飛躍的に売上を伸ばす。そして次回作にも期待が高まってくる。だからお祭りなのだ。

目次

2024上半期直木賞5冊を読破

 さてそんな第171回直木賞の候補作5作をすべて読んだ。読んだ順番は「地雷グリコ」「令和元年の人生ゲーム」「あいにくあんたのためじゃない」「ツミデミック」「われは熊楠」だった。

 単純な好みで選ぶなら「地雷グリコ」と「ツミデミック」の2作が抜けていた。正直どちらかが受賞するのではないかとも思う。とはいえ、この2作が「直木賞を受賞間違いなし!」かというとそんなことはない。単純明快。なぜならぼくは選考委員ではない一般ピープルだからだ。

 そもそも直木賞とはどういう作品が選ばれるのだろうか。日本文学振興会のHPを確認してみた。よくあるご質問の中に書いてある。この手の質問はよくあるのだろう。

Q. 芥川賞・直木賞の違いを教えて下さい。

A. 芥川賞は、雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから選ばれます。直木賞は、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象です。

Q. 芥川賞・直木賞はどのように選ばれるのですか?

A. 両賞の選考会は年2回(上半期は7月、下半期は翌年1月)行われます。両賞とも、対象期間中に刊行された作品の中から、数度の予備選考委員会を経て最終候補作が選ばれ、選考委員の討議によって受賞作(1作または2作)が決定します。「受賞作なし」となることもあります。
出典:日本文学振興会HP

 新進・中堅作家によるエンタテイメント作品の優秀作といったところだろう。賞の根幹はよくわからない。というかぼんやりしている。今まであまり気にしていなかったけれども、本屋大賞の「書店員がおすすめしたい」などといったわかりやすいものではないようだ。文学(賞)はむずかしい。

 さてネタバレなしで5作の感想を記すとこうなる。これは読んだ直後の読了ポストの原文から誤字脱字を修正したもの。後日考え直して、などというものではない。すべて条件は一緒でフェアだ。

「地雷グリコ」(青崎有吾)

短編からなる連作。1章の地雷グリコの展開が読めたので大丈夫かなぁって思ったけど3章から一気に引き込まれて杞憂に終わった。全体感が「成瀬は天下をとりに行く」に近くてストーリーは漫画「嘘喰い」を彷彿させる。よかった。

「令和元年の人生ゲーム」(麻布競馬場)

薄っぺらい動機で行動する人にそれを嘲笑し行動すらしない人。自分ごとでなく他人ごとの人。自我がなく流されるだけの人。争わず冷静に陰で見つめる人。なにが正しいのか──正解なんてどこにもない。それぞれのそれぞれによる人生ゲーム。

「あいにくあんたのためじゃない」(柚木麻子)

6つの作品による短編集。日常で起こりそうな、あるいは起こったであろう光景がズラリ。世の中で見れば大きくはないけど当人たちにとってはとても大事なこと。この本を読むとなにが正しいのか、はよくわからなくなる。

「ツミデミック」(一穂ミチ)

鮮やかに決まる短編推理小説集。帯で犯罪小説集と明かすことで誰がどんな犯罪に手を染めるのかを想像させる手法(なのかはわからないが)は斬新だった。語り手が、脇役だと思ってた人が、意外な人物が、起こすそれぞれの犯罪は日常の延長線上にすべてあった。

「われは熊楠」(岩井圭也)

和歌山に生まれた研究者の一生涯は戦いの連続だった。金、病、人。そのどれもがうまくいかず自身も周囲も生きるのに精一杯。それでも大きなことを成し遂げた(ように見える)のは、ぼくが同時代ではなく今を生きてるから感じるのだろうか。

まとめ

 いわゆるエンタメとして見ると地雷グリコが群を抜いていた。主人公とその周りにいる人物の魅力、推理、友情、駆け引き、ストーリー性そのどれもがほかの4作に比べるとずば抜けている。ほかの4作品と系統が違うからそう感じるのかもしれないし、ぼく自身が単純にこの手の話が好きだからなのかもしれない。

 そしてツミデミック。ぼくが購入した帯には”犯罪小説集”と書いてあった。ほのぼのとした日常ぽい話の展開なのに、どこかで犯罪がでてくるのかと身構えながら読み進めなかればならない。帯で提示し犯罪が起こることを想起させ、誰がどんな罪を犯すのかを推理する小説の進め方は、ページをめくるたびに妙な気持ちになった。

 その他の3作はエンタメ性をあまり感じなかった。あいにくあんたのためじゃない、はコロナ禍での日常の延長線上であり、令和元年の人生ゲームも同様。われは熊楠は伝記に近い。おもしろい、おもしろくないではなく、そもそもエンタメと呼べるのかはちょっとわからないかったのが正直な感想になる。

 半年に1回、直木賞の候補作を読む。これだけでも年10冊の読書だ。それも箸にも棒にもかからないよくわからない作品ではない。感想をアウトプットするだけでも、いや、読んだだけでも、自分自身の血肉となって刻まれていく。

※本ページはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト等)を含みます。紹介している商品・サービスは、筆者の感想・評価に基づくものです。

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本を読み、予想をしたりします。

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