ぼくが書店員なら選ぶのは──2025年本屋大賞ノミネート作品10作を読んでみた

本屋大賞2025

 おもしろくない本なんて1冊もなかった。本屋大賞にノミネートされるだけあり──人それぞれの好みはあれど──10作全てに読み応えがあった。箸にも棒にもかからない、そんな本は本屋大賞において俎上にすら上がらないのだ。投票した全国の書店員さん、さすがである。

 さて今年もノミネートされた10作すべてを読み”ぼくが書店員だったら” このように投票するであろうというものを記録として残してみた。ちなみに昨年はというと、1位が『成瀬は天下を取りにいく』、2位は『存在のすべてを』、3位は迷いに迷って『水車小屋のネネ』としていた。2位と3位は逆だったがトップ3が的中した。はたして今年は──。

※ちなみに執筆時期は2025年である。

目次

様々な形の人間ドラマ

 今年の読んだ順番は、『成瀬は信じた道をいく』『小説』『死んだ山田と教室』『人魚が逃げた』『恋とか愛とかやさしさなら』『カフネ』『禁忌の子』『生殖記』『spring』『アルプス席の母』だ。ノミネート前に読んでいたのは『成瀬は信じた道をいく』『小説』の2作品。その他の8作品はノミネートが発表された2月以降に読んでいる。

 さて本題に入る。本屋大賞の投票権をぼくが持っていたら、『カフネ』『人魚が逃げた』『恋とか愛とかやさしさなら』の3作品に投票する。この3作品に加えて最後に残ったのが『アルプス席の母』『成瀬は信じた道をいく』の2作品だった。 もしかしたら読む順番によって印象が変わっていたかもしれない。M1のネタ順のように。そんなことを少し思ったりもした。

 細かい部分は公式サイトに譲るが本屋大賞の投票基準は要約すると「おもしろいと思い、お客様におすすめしたく、そして自分の店で販売したい」となっている。面白いのは当然でその先が大事だと考えた。

 どの本も要約すると「人間ドラマ」だった。恋人だったり、同級生だったり、家族だったり、親子だったり、同僚だったり、夫婦だったり、その他も含めて決して簡単ではない、さまざまな人間模様がテーマを軸に描かれている。その人々の心の動きが”前提知識がなくても”リアルに伝わり、読者(ぼく)の心を”より”動かした作品を上位にした。

 迷った2作品の1つ『アルプス席の母』は大トリで読んだ。ぼくの中でのクライマックスだったこと、そして(ぼくにとって知識がありすぎる)野球がテーマだったことで最終的に少し割り引いた。題名からわかるとおり、高校野球が軸となっているが、はたしてその知識があまりなくても「面白いと思えるのか? 」あるいは「(高校)野球が好きではない人に勧めることができるか? 」と考えたときに首をひねってしまったのだ。

 これは逆の意味で『spring』にも通じる。バレエが軸となるこの作品はバレエや音楽(芸術?)の知識があれば、より深く味わえたのだろうな、と感じた。ぼくはその前提知識が乏しく、心の底から味わうことができなかった。だからといって読むのが苦痛だったかというと、そんなことはまるでない。ページをめくらせる力に溢れておりしっかりと読破した。

 『成瀬は信じた道をいく』は前作であり前回の大賞である『成瀬は天下を取りにいく』が偉大過ぎた。その印象があり、同じく割り引いた。また前回大賞の続編を勧めるより、他の作品、他の作家さんを勧めたい、という心理もあった。

推したいのはカフネ

 順番をつけるのはむずかしいが、『カフネ』『人魚が逃げた』『恋とか愛とかやさしさなら』の中では『カフネ』を推す。恋人や家族ではないのだから、切っても切られてもおかしくないそんななかでも育まれていく愛情。メインの2人の関係性、心情の移ろいが圧倒的だった。

 『人魚が逃げた』は青山美智子さんってこうだよねって作品。不幸になることがないと信じて読み進めることができる(はずの)短編連作集。一瞬、「ん、不幸になる? 」と思うシーンもあったけれども、終わってみればの安定性。今回はいけるかな? と思ったけれども安定しすぎてて、大賞にはならないのではないか、とも思ってしまう。

 『恋とか愛とかやさしさなら』も、心情の変化や葛藤の描写が凄まじい。重大な事実「プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。」を帯で紹介しており、そのオチからどうのような展開になるのか、それ以上の事実があるのか、を考えさせながら読んだ。重大な事実を前提に描かれる構成だからこそ、読後の余韻が深かった。

 ここまでに触れていない『小説』『死んだ山田と教室』『禁忌の子』『生殖記』の4冊がつまらなかったかというとそういうわけではない。

 『小説』は後半のさらに後半部分からの圧倒的ファンタジー感に戸惑う人も多いだろうと思い、勧められなかった。転調が激しすぎた。『死んだ山田と教室』は「高校時代のノリは、そこで終わり」という現実感がありありと。読みやすいが勧めたくなるか、というとクエスチョンマークがつく。『禁忌の子』は世代を超えた人間模様。医療系はシリアスよりも、ほのぼののほうが勧めやすい。『生殖記』は設定にびっくり。さらに前置きが8割で伝えたいことは2割くらいなのだろう。小説を通じて社会に問題を投げかける形式。これも読者を選ぶのではないか。

 投票権を有していないぼくが勝手な基準で勝手に選んでいるだけではあるが、毎年恒例になれば最低でも年に10冊は小説を読み、考えることになる。それができるだけでも悪くない。

<2025年本屋大賞ノミネート作品>

アルプス席の母(早見和真/小学館)
カフネ(阿部暁子/講談社)
禁忌の子(山口未桜/東京創元社)
恋とか愛とかやさしさなら(一穂ミチ/小学館)
小説(野崎まど/講談社)
死んだ山田と教室(金子玲介/講談社)
spring(恩田陸/筑摩書房)
生殖記(朝井リョウ/小学館)
成瀬は信じた道をいく(宮島未奈/新潮社)
人魚が逃げた(青山美智子/PHP研究所)

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本を読み、予想をしたりします。

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